元楽器屋店員が語る、メーカーでわかる電子ピアノの特徴
電子ピアノを検討する一つの指針として、メーカーごとに特色を把握しそれを元に購入するというのも選び方の一つだと思います。
今回はメーカーごとにどんな特徴があるのかを解説していきます。
YAMAHA(ヤマハ)
言わずと知れた日本が世界に誇る楽器メーカーです。
タッチや音など全てにバランスがとれていて、わずかなニュアンスも表現しやすいことからクラシックを中心に弾く場合はヤマハが最適です。
となると、お子さんがレッスンに通えば必ずクラシックの曲に取り組むわけですから、家での練習のために購入するならヤマハの電子ピアノがおすすめと言えます。
学校には大抵音楽室があり、そこに置かれているのも大抵がヤマハのアコースティックピアノです。
それもあってピアノ=ヤマハ、というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。
また「クラビノーバ」という名前をご存じの方は多いですね。
接客をしていた中でも「10年以上前のクラビノーバを使っていて……」というお客様も多くいらっしゃいました。
ヤマハの特徴としては、音、鍵盤、タッチとあらゆる要素をグランドピアノに近づけるための追求をしています。
音はまろやかな音の中にも輝きを感じられ、響かせ方や鳴った音が消えていくまでの過程がアコースティックピアノにとても近いです。
高音域~低音域までの鳴り方のバランスもよくナチュラルで、誰もが扱いやすい音です。
鍵盤はしっかりとした重みを持っています。
指を離した時の戻り方が特に良いのに加え、高精度のセンサーを搭載しているため連打性が非常に高く、同音を連打するトリル奏法に強いです。
余談ですが楽器作りから得たノウハウで発動機を作ったり、その発動機を搭載したヨットを作ったり、さらにそのヨットのボディ作りの技術を応用して学校のプールまでもつくっています。
KAWAI(カワイ)
ピアノではヤマハと双璧をなす国内のメーカーです。
鍵盤のリアルさにこだわりたい!という方にはカワイの電子ピアノがオススメです。
会社の歴史としては90年近くあり、ヤマハと競い合いながら日本の音楽普及に貢献してきました。
カワイの最高峰のグランドピアノ「EX」は国際ピアノコンクールの中でも非常に権威ある「フレデリック・ショパン国際ピアノコンクール」で使用されるなど世界からも認められるピアノを作っています。(カワイはピアノでは世界第2位のシェアを誇ります)
音はとても深みのある落ち着いた音色の中にも透明感のあるキラリとした輝きを感じられます。
音の切れや伸びもとても自然です。
鍵盤は他メーカーと比べてやや重めです。
しかしただ重いだけではなく、機種によってではありますが鍵盤そのものの長さ(見えている部分から筐体内部に入っている部分まで)がアコースティックピアノと同じのため、その他の構造と相まってタッチ感はグランドピアノに迫るものがあります。
そして電子ピアノに初めて木製鍵盤を採用したのはカワイです。
これらのことからアコースティックだけではなく電子ピアノの鍵盤にも並々ならぬこだわりを持っているのが伝わってきます。
Roland(ローランド)
ローランドの電子ピアノは音の美しさと鍵盤の反応の良さが持ち味です。
クラシックばかりではなくポップスを演奏することも多いようであればオススメです。
その名前から国外メーカーと思われる方も多いですがヤマハ・カワイに並ぶ日本の大手楽器メーカーです。
シンセサイザー、電子ピアノ、電子オルガン、電子ドラム、ギターアンプなどあらゆる電子楽器を製造していてローランドを使用するプロミュージシャンは国内外に多数います。
このローランドは電子楽器専門のメーカーですからアコースティックピアノは作っていません。
にもかかわらず鍵盤やタッチの質感をヤマハやカワイと比較しても遜色なく、これだけの品質の高さを誇っているのにはただただ驚きです。
しかも「鍵盤の象牙調仕上げ」や「88鍵ステレオサンプリング」「グランドピアノ特有のクリック感の再現」「音色の無段階変化」といった技術はすべてローランドが電子ピアノで初めて実現させました。
音は非常にクリアで繊細な美しい響きを持っています。
特に上位機種では音に立体感・奥行きが感じられ、鳴っているのは手元なのに、ピアノの向こう側から聴こえてくるような感覚になります。
ただしどう弾いても奇麗な良い音がするので、上手に弾けていると錯覚してしまうかもしれません。
このように音が良いことがメリットでもありデメリットでもあります。
鍵盤はヤマハやカワイと比べると少し軽めに感じますが強弱に対する反応が非常に良く、とても滑らかな音の変化を表現できます。
電子楽器としての完成度を追求しているのがローランドなのです。
CASIO(カシオ)
レッスンに通っているお子さんのためではなく、大人の方がご自分の趣味で買われていくことが多いのがカシオです。
本格的な練習というよりは弾きたい時に気軽に弾いてピアノを楽しみたい!という大人の方にオススメです。
人気なのは販売価格で5万前後~10万しないくらいの、比較的価格が抑えめのモデルです。
そのくらいの価格ですとサイズもコンパクトで部屋に置いてもそこまでスペースをとりません。
最近では30万円を超える本格的な電子ピアノを発売しましたが、ヤマハ・カワイ・ローランドの3大メーカーの牙城(がじょう)を崩すにはまだ少し時間がかかりそうです。
とはいえ、こういったハイスペックな物を作りはじめたわけですから、電子ピアノにもしっかりと力を入れている事が伝わってきます。
ローランドのように電子楽器としての面を強く持ったメーカーと言えるのではないでしょうか。
KORG(コルグ)
「コルグ」と読みます。
電子ピアノのラインナップは多くなく、スタイリッシュタイプのみを生産しているため、カシオ同様に気軽にピアノを楽しみたい方にオススメです。
バンドをやっている方にはおなじみなのですが、ローランド同様海外メーカーに間違われがちです。
コルグも昔からシンセサイザーなどの電子楽器で有名な日本のメーカーです。
コルグの電子ピアノはデザインに力を入れていると感じます。
シンプルですっきりとした見た目は部屋になじみやすく、オシャレさを演出してくれます。
そういうこともあって、やはり大人の方に人気があります。
比較的手頃ではありますがその割にはタッチ感は決して安っぽくないのでコストパフォーマンスが良いです。
最後に
いかがでしたでしょうか。
各メーカーの特徴や目指しているところをしっかりと把握できれば選ぶ基準も考えやすくなります。
ぜひ参考にしみてください!
ライタープロフィール
元楽器店勤務
ほんま
元楽器店勤務。
楽器がわからないからどれを選べば良いかもわからない、という声の多い電子ピアノ。
そんな方達の電子ピアノ購入を手助けするべくブログを開設。
現在は地方に在住し演奏活動も行っている。
ウェブサイト:http://ep-erabi.com
Twitter:denshipiano_erb